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令和7年9月卒業式並びに学位記授与式 学長式辞

学長式辞

 学部卒業生5名、大学院博士前期課程修了生7名、大学院博士後期課程修了生3名、合計15名の皆さん、卒業、修了おめでとうございます。ご家族?ご親族をはじめ、関係者の皆様にも、お祝いを申し上げます。
 
?  皆さんの中には、卒業や修了後、進学される方もいれば、社会に出られる方もいらっしゃることでしょう。振り返ってみますと、私の場合、大学院の修士課程を修了してから10年間くらいの間に勉強したり、活動したり、経験したことが、その後の人生において、生きるための糧を得る原動力、すなわち働く際の自分の財産になってきた様に感じています。昨年のこの場でも申し上げましたが、この過程で私が重要だと思ったのは、途中の道筋がわからなくとも、遠くの目標が見え、自分はそこへ向かうのだという強い意志さえ保てていれば、自ら選んだ道が遠回りであったとしても、何とかなるものだ、ということです。みなさんも、これからの新たな道を進むに辺り、ぼんやりとでも遠くの目標を見据えながら進んでいただければと願っております。

 一昨日の日曜日、奈良女子大学卒業生の同窓会である佐保会の総会が、奈良ホテルで開催され、私も出席させていただきました。今年のこの佐保会総会の場では、本学卒業生の稲葉カヨさんの講演が催されました。稲葉カヨ先生は、本学理学部生物学科を御卒業後、京都大学大学院に進学され、免疫システムにおける樹状細胞に関する世界的な研究業績をあげられ、数多くの学術賞も受賞されていらっしゃいます。そして2014年ロレアルーユネスコ女性科学賞を受賞された折に、賞金の一部を本学にご寄附いただき、稲葉カヨ記念教育研究奨励賞の名の下、毎年2名の大学院生の方々に、奨学金が授与されています。

 一昨日の御講演の中で稲葉先生は、フランスの研究者であるルイ?パスツールが、「チャンスは準備のない者には微笑まない」という言葉を残していることを紹介していらっしゃいました。そして、チャンスを掴むためには準備を怠らず、チャンスであることをきちんと把握した上で、これを逃さないことが重要であることを指摘されました。また併せて、御自身が何事にもチャレンジ精神旺盛に前向きに挑戦され、気がついたら「女性初の」という枕詞がつく経歴を積み重ねてきてしまった、という経緯を色々と御紹介いただきました。

 ちなみに、パスツールと似たような観点からアメリカの元大統領Abraham Lincoln(エイブラハム?リンカーン)も、
 I will prepare and some day my chance will come.
 「準備しておこう。チャンスはいつか訪れるものだ。」
という言葉を残しています。

 もう一例、私がある会合での講演を伺った際のエピソードをご紹介したいと思います。この会合では、2021年10月から労働団体「連合」の女性初の会長職につかれた芳野智子さんの講演がありました。芳野さんのお名前は、ニュースその他のいろいろな所で今も多く目にされていることと思います。いろいろなお話をされましたが、その中で特に印象にのこっている言葉の一つに、「信頼?尊敬できる方から仕事を頼まれた時は、「はい」か「YES」か「喜んで」が私の返事です。」という内容のお話をされました。

 稲葉先生にしろ芳野会長にしろ、それぞれの分野で一角(ひとかど)の業績を残される方は、何事にも前向きに、楽観的に、かどうかはご本人はそう思ってはいらっしゃらないかも知れませんが、端から見ると楽観的に、ということになりますでしょうか、そういう姿勢で取り組んで来られたのだな、という印象を持ちました。楽観的が常に善とは限らないとは思いますが、物事の見方や対処方法としては、「準備」、「楽観的」、「前向き」、「挑戦的」、というキーワードは、人生を歩んで行く上では、一つの大きな指針となるように思う次第です。

 さて、本日の卒業?修了式に合せて、お勧めしたいことがあります。皆さんの諸先輩方がつくられた同窓会である「佐保会」に加入することを、ぜひ、考えていただきたいと思います。他大学と比べると1学年の学生数が少ないので、絶対数は少ないですが、本学OGの方々は既に多方面で活躍されていらっしゃいます。先にご紹介させていただきました稲葉カヨ先生も、佐保会の会員でいらっしゃいます。社会に出た場合に、人と人とのネットワークというのは大変重要です。「佐保会」は、各県毎に支部が設置されており、これほど同窓会が充実している大学も珍しいと思います。このような人と人との繋がりを大切にすることは、プライベートでも仕事の上でも、みなさんの人生にきっと良い影響をもたらしてくれることと思います。

 最後になりますが、本学を巣立つ皆さんの成長と活躍を目にし、耳にすることは、私たち教職員にとって大いなる励みとなります。奈良女子大学での経験を生かして、大いに奮闘、活躍していただきたいと思います。皆さんの前途が実り多いことを祈念して、お祝いの言葉とさせていただきます。


 令和7年9月30日
 奈良女子大学長 高田将志